投稿日:2006-01-24 Tue
外出して戻ると、ドアのノブにビニール袋がさがっとる。―留守に誰か来ちゃッたんじゃ、誰じゃろ?―
袋を覗くとまぁるい蒟蒻があった。
メモがあって、
山奥の温泉に行って来ました。やまんばさんの好物、召しあがってください。
Tより
じゃと、・・・やれ嬉しや・・・
早速お礼の電話入れると、
「やまんばさんは、こんにゃくが好きじゃけぇ、気が楽よ、食べてぇね」と・・・
何にしょうかと考えんでもええそうな。
今頃はこんにゃくがどんな作物かは、テレビなんかで見せたりするけぇ、知っとってじゃろうが、わたしらの子供の頃は、大人でも知らんじゃった。
あの頃わたしの村は、ほとんど百姓や(農家)ぢゃったけえ、子供でもたいがいの作物のことは知っとった。
ほいぢゃが、こんにゃくのことは、さっぱり解らん。
おばあさんに聞いても要領を得ん。
おばあぁさん
「こんにやくはのう、こんにゃく玉から作るんぢゃげな。」
わたし
「ほんなら、こんにゃく玉はどがいにして作るん?」
おばぁさん
「・・・さあらのう??・・・・・エエイッ!ほんにわりゃぁ、ほうとぬるいに、(ほんとにあんたは、とろいのに)ねんだぁ堀りよのう、(理屈いいの知りたがりや)よいよ(もう)こんにゃくに聞いてみいっ!」と怒る。
わたしは何でも知りたがって、うるさい子供じゃったらしい。
おばぁさんも、知らんとは云いとう無かったんじゃろ・・・・。
「ねんだ堀り、ほうとぬるい」と云れ乍ら長じたが、
今もって変わらんとは情けない。
こんにゃく玉はどがいな玉ぢゃろう?どがいにして作るんぢゃろう?
野菜ぢゃろうか?木ぢゃろうか?・・・・
いつもくたびれた脳みその隅に引っかかっとった。
「のう、こんにゃく玉のこと誰か知っとらん?」
いつもの遊び仲間に、おそるおそる聞いたら、即座に返事がとんできた。
「そりゃぁのう、牛の○○に、よう似とるんぢゃげなでぇ、見たけりゃなんぼうでも見りゃぁええ、うちのうしゃぁ(牛)おん(雄)じゃけぇ、ええのぅ下げとるでぇ~。」
わたしは返事に窮して、ポカンと立っとった。
すると彼らは「ひろうやんは、・・・・・」だんだん調子ずいて囃し立てる。
たいていの女の子なら、そこらで泣き出すんぢゃろうが、わたしは覚めとった。
おばあさんはそれを、「泣きもせん。ほんに可愛げのない子ぢゃ。」と云うて
「ちゅうにわりゃ丁稚ぢゃのう、おなごの子たぁ、さらに(ちっとも)遊ばん、おせに(大人)なっつらあ、どがいなことになるやら、思いやられるでよ」と嘆いてぢゃった。
遊び呆けて帰ると
暫らくしてUちゃんの声がした。
「あののう、わしゃぁこんにゃく玉の、ほんまのこと知っとるんで」
わたし
「ふぅん?ほいで?」
Uちゃん
「うちに植えたるんぢゃぁ。」
わたし
「えっ?嘘ぢゃろ、ほんまかい。」
Uちゃん
「嘘ぢゃあない、ほんまよう。」
わたし
「ほんなら見せてぇや。」
彼は困った顔で返事がない。
わたし
「やっぱり嘘ぢゃろ。」
Uちゃん
「ほんまよう、ほんまよう・・・・あののう、おかやんがの(母が)人に見せちゃいけん云うちゃったんぢゃ!」
わたし
「なしてや?」
わたしは、どうしても見たかった。
Uちゃん
「あののう、人に見せたら枯れるんと。」
わたし
「ふぅん、ほいで、あんたんがたの(お宅)どこに植えたるん?」
Uちゃん
「・・・・云われん、おかやんが云うちゃあいけん、云うちゃったんぢゃぁ。」
それからわたしの心の隅に、久しく幻のようなこんにゃくがあった。
―つづく―
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